プロセスワークとは
プロセスワークは、プロセス指向心理学とも呼ばれる学際的アプローチです。言葉だけでなく身体感覚や動作をふくめた心と体の全体性やものごとの流れ(プロセス)を重視する心理療法として出発し、ダンスやアートなどにもつながる生き生きした創造性も大切にしています。現在では心理学の枠組をこえて、より豊かな人間関係や集団/組織の創出をめざすファシリテーション技法としても注目されています。悩みや葛藤の解決方法としても有効ですが、自覚(アウェアネス)を何よりも大切にする生き方の提案でもあり、また、通常の意識状態ではとらえにくい微細な体験や自我を超えた大きな存在とのつながりを重視する点ではスピリチュアリティの実践でもあります。複雑にからみ合い変化する事象のパターンをわかりやすく分析する手法と、個人やグループの変容をうながす体験的アプローチとをあわせ持つことが特徴です。
プロセスワークの始まりは、創始者アーノルド・ミンデルがマサチューセッツ工科大学で物理学を学んだ後、スイスのユング研究所の分析家として活動していた1970年代に遡ります。夢のイメージが持つ意味やメッセージに通暁していたミンデルは、自分自身やクライアントの身体症状の中にその人の夢に現れるイメージと同じようなパターンが現れることに気づきました。彼は夢と身体の双方に同一のメッセージを送る送り手を想定し、「ドリームボディ」と名付けて1982年に同名の著作を発表します。心と身体はばらばらでなく一つの全体であり、そこにさまざまな形で現れるイメージや症状やトラブルは、私たちがより豊かに全体的に生きる道を教えるメッセージだと考えました。そしてそのメッセージを受け取るには、「すべてのことに意味がある」「問題の中に答えがある」という姿勢や子どものような好奇心をもって関わり、静的に分析するだけでなくメッセージが生きて動いていくプロセスそのものに随いふかく体験することが重要だと考えたのです。
その後80年代を通じてミンデルは、夢や身体症状のみならず、人間関係のトラブルやグループに起こることにも同じようなパターンを見出し、ワークの対象をカップルや家族、組織や地域コミュニティ、社会問題にまで広げていきました。またその一方で、意識の多様なあり方をさぐり、いわゆる精神障害を「極限意識状態」と名づけて独自のワーク方法を深め、また死に近づいた意識変容状態や昏睡のような深い意識障害にある人ともコミュニケートできる手法「コーマワーク」を開発していきました。
90年代以降は、ワールドワークと呼ばれるグループファシリテーション技法が大きく発展し、国際問題や組織開発にも応用されています。現実的なさまざまな問題だけでなく、なかなか表現しにくい感情から「私たちはなぜここにいるのか」という深い意味のレベルまでを含めて、個人の内面・対人関係・組織のシステム・社会文化や生態系のシステム全体の多層的ダイナミクスを一つのパラダイムで扱えることが特徴です。
そして現在も、より豊かで維持可能な生き方をめざすアプローチとして発展を続け、ミンデルが拠点とする北米オレゴン州ポートランドを中心に世界各地でセミナーやトレーニングプログラムが展開されています。
これ以後の各ページでは、右の項目についてより詳細にご案内します。ただし、2005年7月現在のまとめになることをご了承ください。その後もプロセスワークは変容を続けていますので、いずれ内容をアップデートしてお届けする予定です。
この「プロセスワークとは」ページおよび「関連文献」ページのみ、2010年にアップデートされています。

